これからのビル管理業務は、単にビルの現状を維持するにとどまらず、ビルの付加価値を高め、またビルに働くワーカーの生産性も含めたトータル的な資産価値の向上に努めていかなければなりません。 そこにファシリティマネジメントという考え方を取り入れていくことが重要です。 ここではファシリティマネジメントとは何か?といったことから、具体的な方法論まで示してみたいと思います。なお、ファシリティマネジメント(以下FMと称す)において、重要な要素であるビルの情報化については、別のページに詳しくまとめます。 1. FMとは?
すなわち、FMとはビル建設前の計画段階から、廃棄までのライフサイクルコストを最小化し、、建物そのもの及びそこで働く人々も含めた全資産価値の最大化(コストミニマム/エフェクトマキシマム)を図る経営管理手法である。 2. FMの目的、効果
なお、b.の効用については、その内容は次のように多様なものを含む。
運営維持には@維持保全、A運用管理、Bサービスの3つの業務からなり、互いに密接な関連をもち、次のような役割を果たすために行われる。 @ 品格性の保持 地域の風土に適合し、象徴性、グレードと美観を維持・向上しながら施設の品格性を保つ。 A 快適な環境の提供 移住性を良くするとともに、利用者の嗜好と満足度を満たすような施設を作り、運営を行う。 B 生産性の発揮 ファシリティの持つ機能を十分に発揮させ、効率性、利便性、融通性のある場とするとともに、運営費のミニマム化を図り、生産性を高める。 C 適合性の確保 建物等の劣化に伴う機能の低下を防止し、耐用年数を延伸させるとともに、安全性、機密性を確保し、事故・災害の発生、拡大、進展を最小限にとどめ、人命と資産の保全に努める。 また、利用者の健康の保持、向上に配慮した環境づくりを行い、要求への適合を図る。 D 信頼性の向上 ファシリティの法への適合や機能の維持にとどまらず、要求水準の変化・向上に対し、種々の改善、改修、更新等による機能の拡大・向上を行う。また、社会・環境への調和に配慮して、省エネルギ、環境保全を推進する。 E 資産の活用 FM関連資産の保全と有効活用を図り、適切な供給と利用を通じて、効果的な施設の運営を行う。 運営維持の主な業務の対象、内容、特徴等について、下表にまとめる。
運営維持の管理サイクルは、計画→実施→評価→改善→計画のPDCAサイクルをまわすことによって、実施していく。これらのPDCAサイクルを円滑にまわすために、運営維持データベースの構築が必要になる。
そのために、日常業務における仕事(人、物、データ)の流れを把握、分析し、データベース化を行う業務の範囲、構成のイメージを明確にしなければならない。さらに運用後には、データベースのメンテナンスを計画的に行い、整備に努め、ここからのフィードバックを継続的に実施することにより、建物、設備等のハード面及び施設運営費等のソフト面についての傾向の把握、適正化、改善、あるいは運営維持計画の見直しなどを図ることができる。 5. 人と室内環境 5.1 光 ビル内の光環境では、明るさ(照度)、演色性、まぶしさの各要素を考慮する必要がある。したがって、照明に対して以下の工夫が必要である。
@ ルーバー付きの照明器具や間接照明などを採用し、光源が直接見えないようにして、まぶしさ(グレア)を防ぐ。 A 強い外光が直接画面にあたらないよう、窓面(特に南面)を背にした機器配置を避ける。 B 見ている書類の照度と机上の照度比を3:1、机の周囲とは5:1〜10:1程度にすると疲労が少ない。 5.2 音 仕事に集中することを要求されるオフィスワーカーの周囲に流れる騒音は、知的生産活動の妨げとなる。 逆に度の過ぎた静けさも居心地の悪いものである。 一般にオフィスの騒音レベルは45〜55dBが適切であるとされている。 そのため、オフィスにおいては以下のような対策が必要である。
@ 天井・壁面の仕上材に吸音性能を持たせる。 A 吸音、遮音効果のあるパーティション(天井間仕切りやローパーティションなど)を導入する。 B 吸音のために床面にカーペットを敷設する。 C プリンタなどの騒音源を防音機能をもつカバーをかぶせることにより遮音する。 5.3 熱 オフィス内で各人が作業効率を上げ、快適に過ごすためには、季節に合わせて最も熱バランスが平衡な温熱環境を作る必要がある。そのために、以下の点について検討を加える。
@ 空気の流れがスムーズになるような家具の配置を行う。 A 発熱量の多い情報機器が集中する場所には、個別のスポット的な空調を施す。 B 温湿度のムラが生じる場所には、扇風機や加湿器などでこまめに対応する。 C 残業時や休日出勤時に対応した空調機運転体制、空調範囲を分割できる空調システムを導入する。 オフィス内では、一般的に夏期には温度26℃、湿度50%、冬期は22℃、45%が良いとされている。 5.4 空気 室内の空気を清浄に保つために、空調機による外気量の確保とフィルター性能の維持は重要であり、一般的な居室では室内CO2許容濃度0.1%になるような換気量として30m3/人/hが導入されている。
6. ライフ・サイクル・マネジメント ファシリティの企画段階から、設計・建設、運用そして解体処分に至るまでのファシリティの一生に着目して企画、管理を行う考え方をライフサイクルマネジメント(以下LCM)という。LCMはライフ・サイクル・コスト(生涯費用、以下LCC)やバリューエンジニアリング(価値工学、以下VE)を中心とした考え方である。
6.1 LCMの目的 LCMの目的は、以下の6項目である。
@ ファシリティの効果(目標達成度)の最大化 A ファシリティに対する満足度の向上 B ファシリティライフ(耐用年数)の長寿命化 C ライフサイクルコストの最小化 D エネルギ消費、環境負荷の最小化 E 安全、防災等のリスクの最小化 6.2 ファシリティライフの長寿命化 日本は欧米諸国と比べて建物の寿命に対する考え方が異なり、住宅を例にとると、実際耐用年数では英国で140年、米国では103年、フランス86年、ドイツ79年に対して日本の住宅の耐用年数はわずか30年という統計があり、日本人は建物を消耗品と考えているとさえ思える。
しかし、@人口の減少と情報ネットワーク化の影響により需要が減少し、経済的余力がなくなり、フローよりストックを有効に使わざるをえなくなる。A建設工事に伴う炭酸ガス排出量は全体の17%を占めており、省エネルギ、環境保護の観点から、わが国でもスケルトン(構造)とインフィル(内装)を明確に分けて計画し、建物の耐用年数を長くする手法がとられ始めている。 6.3 ライフサイクルコスト(LCC)とは LCCとは建物の設計・建設費などの初期投資と維持保全費、運用管理費など施設運営費および解体処分までの建物の一生に必要な費用をいう。
40年間の建物のLCCは初期投資である企画設計費と建設費がLCCに占める割合はわずか20%弱であり、施設運営費は建設費の4倍にも達する。 しかしながらLCCの大半である施設運営費は建物の企画設計の時点でほとんど作りこまれており、いったん建物ができてしまうと、運営維持のコストの画期的な削減は難しい。そのために建物の企画設計の早期に運営維持コストを考えたLCCの要求を出すことが大切である。 6.4 中長期修繕基本計画 建物の完成後は、建物の診断や保全データからの不具合評価に基づき中長期修繕基本計画を策定する。
@ 不具合の状態や傾向を把握し、必要な修繕・改修費を算出する。 A 限定された修繕・改修を優先的に行う。 B 更新年の近いもの、工事箇所の関係が深いものをまとめて、トータルの工事回数を削減する。 |
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